前回は、「銀行の事業承継対策提案の裏側~資産管理会社の提案を受け

前回は、「銀行の事業承継対策提案の裏側~資産管理会社の提案を受けたことはありませんか?~」と題して、銀行の事業承継提案の裏側について解説しました。事業承継が多くの中小企業にとって深刻な課題になりつつある昨今、銀行は融資とセットで資産管理会社の設立を積極的に提案している実態があるということを理解して頂けたのではないでしょうか。

それでは、果たして資産管理会社を設立することは事業承継にとってメリットの方が大きいのでしょうか? それともデメリットの方が大きいのでしょうか? 今回はメリットとデメリットを簡潔に整理してみたいと思います。

まずはメリットについて見てみましょう。これらの点は、銀行の担当者がアピールするポイントだと思いますので、話を聞いたことがある方も多いかもしれません。

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【メリット①】事業会社株式の分散防止
オーナーが経営する事業会社の大株主が個人の場合、相続が発生する毎に大株主が分散していきます。そこを資産管理会社にオーナー一族の株式を集約することで、事業会社の株式の分散防止に繋がり、経営の安定に寄与するという利点があります。

【メリット②】配当や株式評価に対する税効果
資産管理会社が事業会社から受け取る配当金の課税は、100%又は50%の「益金不参入」扱いになります。個人が受け取る配当金は未上場企業であれば総合課税となることを考えると、特にその他の収入が多い大株主にとっては税制メリットは少なくありません。もうひとつ、資産管理会社の株式の評価計算において、事業会社の株式の含み益の42%相当額を控除することが可能になります。つまり、株式の相続税評価額の抑制にも繋がります。

【メリット③】オーナー一族への所得分散
資産管理会社から、オーナー家族に給与を支給することで所得を分散することが可能になり、相続税の支払い資金の確保に繋がります。また、資産管理会社から後継者に給与を支給することで、後継者の株式買い取り資金の確保にも繋がり、後継者の資金負担を減らすことが可能になります。

以上、大きな3つのメリットについて簡単に解説しました。それでは、ここからは銀行の立場ではあまり強調したくないデメリットを見ていきましょう。

【デメリット❶】資産管理会社株式の換金性
実は、資産管理会社株式は、事業会社の株式に比べて換金性が低くなるのです。したがって、事業承継や相続時に、当該株式の移転が発生する場合、相続税・贈与税等の納税資金の準備が課題になります。

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【デメリット❷】株主の分散や経営権の分散
事業会社自体の株主の分散を防止できる一方で、資産管理会社の株主が相続発生とともに分散していきます。その結果、株主間での資産管理会社の運営方針の対立が起きやすくなったり、運営に関心の無い株主が増加して行く危険性が高くなるのです。

【デメリット❸】資産管理会社の株価評価
資産管理会社は「株式保有特定会社」に該当する可能性が高く、一般の評価会社に対して株式の相続税評価額が高くなりがちです。このような場合において、合理的な事業計画に基づいて資産管理会社の資産構成をどのように見直すかが論点として想定されます。上場会社の場合、上場会社株式を売却し資産管理会社の株式比率の引き下げを行うことは流動性の観点から難しくはないのですが、未上場企業の場合は容易ではありません。